14日ぶりのタバコ


会社を休んだ日から二週間経つ。
休んだ日を境に五本のタバコを残して、タバコは買わないことにした。
いわゆる禁煙というやつだ。
しかし、二週間目にして残っていたタバコの一本を吸った。
別にニコチン中毒というわけでも無ければ、どうしても耐えられなくてという事も無い。単に、「二週間禁煙した、タバコの味はどうなんだろう?」という軽い興味からだ。
タバコを口に銜えて火をつける。一連の流れに戸惑うことも無ければ懐かしさもない。条件反射のようにスムーズに手が動く。ゆっくり息を吸い、煙で肺を満たす。そして、ゆっくりと吐き出す。白い煙がベランダを出て空に散っていく。灰を灰皿に落とし、所定の動作を繰り返す。
「何も変わらないものだ。」と思う。


昔、友達が「なんでminoresuはタバコを吸いだしたの?」と不思議そうに聞いた。
僕は、タバコを吸い出したのは社会人、それも二十台後半からである。
タバコをやめる人はいても始める人は皆無な年から吸いだしたのだ。
だから友達は不思議に思ったのだろう。
いろいろな原因が頭に浮かぶ。転勤、失恋、過労、どれも正しい感じがするけれども、振り返ってみて、それだけではタバコを常用するようにはならない感じがした。


「...『罪悪感』かな」と僕はいった。

「罪悪感?」

「そう、罪悪感。高校生がタバコを吸うときの気分と同じ罪悪感だよ。タバコって体にも悪いし、いいこと一つもないじゃん。しかも吐き出す煙は副流煙となって回りにも迷惑をかける。そんな悪いことをしている罪悪感が他にあんまり悪いことやってない僕にとっては心地いいのかもしれない。」といった。
「罪悪感ね〜。ホント高校生と同じじゃん。」と子供を見るような目でみながら友達は笑った。

そういえば、最近はタバコに罪悪感を感じることは少ない。単純に体に悪いという自分勝手な理由だけだ。
僕にとって罪悪感の薄らいだタバコはそれほど重要なものでは無いのかもしれない。
かといって他に罪悪感を感じられるものを見つけた訳では無いけれども、少し軽い朝の為に、残り四本のタバコでしばらくやっていこうと思う。

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