ハナビー


古き良き伝統は残して、新しい文化を取り入れる。
そういうのが理想だと思う。
近年入ってきたのは合理主義。排他されたのは人情だろうか。
物事には得手して二面性がある。
下町文化のような美しい助け合いもある反面、いじめや陰口のような側面も生まれる。
二面性は片方側だけ生かすことは難しい。


僕は浴衣が好きだ。
だから花火を見に行くときは浴衣を着る。年に一度のコスプレ感覚なのかも知れない。
花火の行われる古河市に到着し、駐車場からとぼとぼと河原まで歩く。
道には焼きそばやたこ焼き、カキ氷や綿雨の出店が並ぶ。
最近はイカ焼き(たこ焼きのイカ版)やピザの出店まである。


ふと寅さんを思い出す。


寅さんは、日本中を渡り歩き的屋家業を生業とする。
売り物はバナナやバッグ、近年ではCDなんかを売っていた。
しかし、口上は相変わらずだ。

「結構毛だらけ、猫灰だらけ、おしりの周りはクソだらけ
四谷、赤坂、麹町、チャラチャラ流れるお茶の水、粋な姐ちゃん立ち小便
白く咲いたはユリの花、四角四面は豆腐屋の娘、色は白いが水くさい...」


適当な場所にビニールシートを敷き、ビールで乾杯をする。
一時間くらい談笑をして、程なく一発目の花火が上がる。


僕はパリで見た花火を思い出す。
ポンピドゥー・センターの前で友人と待ち合わせをしている所に、3人の外人さんが来て、一緒にのみに行かないかと誘ってくる。
友人が来たところで、ものは試しにと付いて行く事にする。
(今考えると危ないことだけれど、確か楽器を持っていたことが無意識に安全と判断したんだと思います。)
最初は5人で飲んで片言の英語でしゃべりながら食事をしていると、更に友達が友達を呼び総勢12人での会食になっていた。
僕に声を掛けてくれたペルー人。フランス人、ドイツ人、イギリス人、スペイン人...各国入り乱れての会食である。
どうやらペルー人の彼が僕らを誘ったように人を集めたようだ。
「Do you know fireworks?」
「What is fireworks?」
「Don.Doon.」
僕はそのころfireworksという単語は知らなかった。
身振り手振りで一生懸命説明してくれるけど、僕は全然わからない。
今日あるからこれから見に行こうと言っている。
僕らは彼らに付いていく、セーヌ川まで出るとパリの街は人々でいっぱいだった。

そして、一発目のFireworksがDonと咲く。


帰り道
下駄の鼻緒が僕の足を痛めつける。
浴衣に靴では様にならないのでしょうがない。
綺麗さと醜さも表裏一体。
火薬は爆弾にもなるし花火にもなる。

ハナビー、短い夏と共に。