グラスで酔い覚まし


上司の新築祝いと称して、新しい家で晩飯をご馳走になる。
日頃お世話になっている上司夫婦は時々ご自慢の料理を振舞ってくれる。


初めて料理を振舞ってくれたのは、宇都宮に転勤になった直後だった。
上司夫婦も、僕らも、見知らぬ地に越してきたという同じ境遇からか、シンパシーを強く感じるお食事会だったのを覚えている。


歳月が経ち、みんなこの地に親しみを持っている今回のお呼ばれ。
昔のシンパシーは無いが、ゆったり、ほのぼのした、夕べとなっていた。上司の名前のついたスイカの話や、子供の頃の夏休みのラジオ体操の話、ご近所井戸端会議の話など、話が生まれては、ビールの泡のように消えていく。僕はビールが進みすぎて、回りが心配するほど顔が赤くなっている。赤くなったボクに赤く染まったご自慢の琉球ガラスにお茶を入れてくれる。


なんだか夕日のようなグラスに懐かしさを感じ、少しおでこにあててみる。
冷たくて結構気持ちいい。グラスで少し酔い覚ましです。