cyclamen


写真教室の撮影会に栃木のとある温室に向かう。
現地に着くと風がビュービュと吹いており、かなり寒い。
先生が到着して温室の中で撮影会が始まる。
温室の中は外の寒さとは対称的に春の暖かさで、赤や白や黄色やピンクの花々や、力強い緑の葉っぱをつけた植物で満たされている。
気に入った被写体を見つけてカメラを向けて撮影を開始する。
僕は余り花を撮影する事は得意ではなく、引きの絵ばかりを撮影していたが、だんだん飽きが来たので、エキステンションチューブをつけて花のマクロ撮影を始める。
様々なランやパンジーなどを撮影するが撮影された写真を見返してもどこかで見たような写真であり、あまり乗ってこない。
それでも、撮影を続ける。
少し離れた温室まで行ってみるとシクラメンが咲いているのを見つける。
シクラメンはよくも悪くも思い入れのある花だ。


小学校低学年のとき、植物の観察日記をつける授業があった。
たしかチューリップだったと思う。
その最初の授業には各々家から空の植木鉢を持って来て土を入れてチューリップの球根を植える事になっていた。
しかし僕はその事をすっかり忘れていて、前日の夜に、
「あした、植木鉢を持ってかなくちゃ行けない!」と僕は母親に言う。
母親は、
「もっと早く言わなきゃだめじゃないの。」などと小言を言いつつも、植木鉢を探す。
しかし前日に空の植木鉢は見つかるはずもなく、僕はだだをこねていた。
すると、翌日には母親が大好きなシクラメンの植木鉢から、咲いているシクラメンを土ごと新聞紙の上に掘り出して、空になった植木鉢を僕に渡してくれた。
そのシクラメンは、翌日には新しく買って来た植木鉢に植え替えられ事なきを得たように思われたが、結局は枯れてしまい。
毎年咲いていたシクラメンは翌年には咲かなくなってしまった。


シクラメンを見るたびにそんな思い出が思い出されて、いつも微妙な気分になる。
なんだかシクラメンのように頭を垂れたくなる気分だ。


そんなわけで今日は僕の誕生日。
逆プレゼントとして、この写真はその時自分のシクラメンを犠牲にしてくれた母に捧げます。