Copy Copy Circle


旧友K氏と恵比寿で、「月に囚われた男」を見るために待ち合わせる。
少し時間があったので、東写美で「森村泰昌展・なにものかへのレクイエム」をみる。
どこかで見た有名な写真や映像と同じ表現方法で、登場人物を自分が演じるという表現手段である。
意図的に似せるところは似せるが、意図的に似せないところは、あえて違うものを突っ込んでいる。
作品をみていると似せ方の見事さには驚嘆するが、一品一品見ていると、「この人は何がしたいんだろうな。」と思ってしまう。
オリジナル性を目指すのではなく、コピーと本物との違和感の表現。
ただ、これだけの数が揃うとそれはもはや、オリジナルであり、その人の生き様になる。
と頭では思うのだが、やはり自分の肌とは合わない。


足早に写真を見て、いよいよ映画を見る。
月に囚われた男も、コピーというテーマが描かれているが、
コピー品である者の切なさ、お互いがわかっているだけに、お互い自分ではない自分に腹をたてる気にはなれない。
その切なさが合わせ鏡のように増幅される。
良作であり、残る映画だが人には余り勧める気にはならない。
そんな映画をカフカや、村上春樹にならって、「斧映画」と呼ぶことにする。
まあ、今日の映画はそういう映画。


そんなどこにぶつけるでも無い気分を銀座の開放的なビアフォールでビールを煽って、綺麗な丸い照明を見ながら僕らは泡を弾く。