カメラ日和 〜有楽町〜


晩飯時の銀座の目抜き通りには、飲み屋や食べ物屋に向かう人たちで満たされていた。僕らは目抜き通りは通り過ぎ、中古カメラ屋に向かう。しかし無情にもシャッタは閉じられていた。
そのやりきれない気分を満たそうとカメラ量販店に入りカメラ売り場を覗く。カメラ売り場には、自分で操作できるDPE端末がずらりと並べられていた。F式は興味を持ったようでDPE端末を触りだした。
そんな様子を見て、「今日のベスト写真を1枚現像してお互いにあげるっていうのはどうだろう。」と提案した。
「そうしようか」といい、お互いそれぞれのDPE端末にCFカードを入れてベスト写真を選び出す。
結局選びきれずに三枚の風景写真を現像した。横を見るとF式も四枚現像していた。お互いの写真を見ると、F式は僕が写っているスナップ写真、僕は風景写真。嫌いな食べ物は同じだけどベスト写真の好みは結構違うようだ。

カメラ量販店を後にして隣の東京国際フォーラムに行く。
良くある構図でよくある写真を撮影する。某シャンプーのCMのような構図で撮ったり、上に上がって、空中廊下を歩きながら撮影したりする。
よく通る場所なので何回かシャッターを押したことがあるが、空間の高さがファインダー越しに覗いていても飽きることがない。
見上げて撮影しているとなんだか鯨の中にいる気分になりなぜだか落ち着く。近代的な建物がかもし出す鯨のイメージは食われてしまったというよりは守られている感じがする。夜の森は不安感を与えるのに対して暖色のライトで照らされた建物内は、人が作った安全な空間なのかもしれない。

鯨のようなその建物を後にして、東京駅周辺で一杯飲もうと居酒屋を探す。和風の落ち着いたお店を探し出し、席についてメニューを見ずにとりあえず飲み物を注文をした。
「ご注文の際はテーブルの下にありますスイッチを押してくださいませ。」と店員。
「分かりました。」と僕。
「ん。」とF式。
「なんか、昨日とスイッチの位置が同じとこにあるんだね。」と僕。
「...というか店舗は違うけど、同じ店じゃない。」
F式がメニューを見て「ほら、昨日頼んだ梅酒が載っているよ。」とメニューを見せる。
奇妙な偶然になんだか面白い気分になる。
人の好みはなかなか変わらないと云うが、無意識に同じものを選ぶとはなかなかゆるぎないもの。


自分が好きなものを相手にあげる、相手が好きそうなものを相手にあげる。
意識的と無意識的に選ぶ確立。そんなものをごちゃませにして思うことがある。


「自分の好きが相手も好き。そういう偶然を大切にしたいな。」と思う。
そんなカメラ日和でした。

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