演劇の会 ロマンス


三茶で演劇の会。
今回はアントン・チェーホフの生涯を描いた『ロマンス』という作品です。


医者であり、小説家であり、優れた劇作家であるチェーホフ。冒頭はピアノと松たか子大竹しのぶの「ボードビルを愛したチェーホフ♪」という歌で始まる。劇は壮年から晩年までチェーホフが歳を追うごとに4人の役者が年ごとに演じ、他のすべての役も6人の役者が立ち代り演じていく。軽妙な笑いを交えて劇は進んでいき前半の幕が下りる。


休憩時間、いったん外の空気を吸いに外に出ると、H氏が目線で示して、
「あの人、ポスターの真ん中にいる人じゃない?」と小声で言う。
ポスターを見比べるとたしかにポスターの人と同じメガネをしている。
「この演劇の劇作家、井上ひさしさん...ですよね。」とお互い気づかれないようにチラミして確認する。座席に戻り、席を見回してみると、氏は僕らの席から通路を挟んで3席しか離れていない。


休憩時間が終わり幕が上がる。
チェーホフと妹マリヤ・チェーホフとの暮らし、妻オリガ・クニッペルとの出会い、そして劇作家であるチェーホフと演出家との口論。トルストイが巻き起こすドタバタコメディ、いやボードビルの笑いを散りばめて舞台上の劇は進む。
チェーホフの時代とまさに今の時間が同期する。
古きロシアの作家とその作家の人生をボードビルで描いた作家、そして、この今の空間。舞台側と観客席側が妙な臨場感を醸し出す。


劇はドタバタに呈して、次第に笑で劇が盛り上がる。
しかし、一瞬にして場の空気が変わる。
自分の心がどうしようもない悲しさに包まれる。
周りもシクシクとしんみりムードに変化する。


ラーメンズ小林健太郎も言っていたが、泣きに一番近いのは笑いだ。笑いで感情に振り幅をつけて一気に反転させる。なかなか狙っても難しいものだ。
劇中劇のような不思議な感覚、氏は何を思い、役者達は何を思い、アントンは何を思うのだろう。