汗の吹き出る古道


名古屋からシャトルバスに乗って熊野古道の一つ伊勢路に到着する。
伊勢路伊勢神宮から熊野三山に続く古道であり、現在ではその古道は途切れ途切れになり、それらがいわゆるハイキングコースのようになっている。そのコースの一つ、紀北町尾鷲市を渡る馬越峠を登る。
入り口は紀北町側の道の駅海山を国道で500mほど登った所から始まり、国道沿いの杉に囲まれた山には古い石が敷き詰められた古道がウネウネと続いている。僕はバックパックを背負い、首からはカメラをぶら下げてノーファインダで撮影しながら登って行く。
幸いな事に古道は杉に遮られ日光は余り届かないが、それでも石畳を荷物を背負って登る事は僕の日頃の運動量をオーバしており、十分も歩くとジーンズは股に張り付き、額からは汗が玉のように吹き出る。僕は最初のマイルストーンである夜泣き地蔵までの時間を計り、ガイドブックに書かれてある時間と比較し、標準タイムと同じ事を確認する。
「まずまずのペースだ。」
僕はジーンズから短パンに着替え、ペットボトルの水を飲んで、息を整えたところで先ほどと同じペースで峠を目指す。
相変わらずの杉林と石畳が続き、汗も同じペースで吹き出る。更に一時間ぐらい登り詰めたところでやっとで尾鷲市が一望できる峠に到着する。後は楽な下り坂だが足が笑ってなかなかに負荷がかかる。それでも上り坂よりは楽で、時間も標準時間を次第に越えて行く。そして杉林が途切れた所で尾鷲市の街に入った事が分かる。そこには、古き良き街が残っていて僕の好奇心をくすぐる。
「昔の旅人も峠を越えた時はこんな気分なのだろうな」と昔の旅人に心を馳せた。


P.S旅行から帰って来て、ジャケ買いした本が下の本です。偶然にも熊野古道大峯奥駈道伊勢路よりももっと山深い修行者の道)にある神社の巫女の話で、一気に読み終えてしまいました。今度はこちらの道をチャレンジしてみたいものです。