昔の写真から 〜トレイン・サイクル・ダイアリーズ〜


棚を整理していると古い写真が出てくる。
僕はその頃カメラを持っていなかったからおそらくレンズ付きフィルムの写真だろう。
写真を見てどこの駅の写真だかは正確には分からないが、何時取られた写真かは分かる。
学生最後の夏、突発的に行った一人旅の写真だ。
今考えれば毎日が休みのようなゆるさなのだが、その頃はバイトや自主映画や研究に忙しいと思っていて煮詰まっていた。
研究室の同期に「疲れた、旅に出るよ。教授には適当に言っといて。」と言い残して、映画部の部室にあるハンディータイプの8mmを借りて、バックパックに下着と時刻表と宿ガイドを詰めて出かける。
品川から大垣夜行に乗ってひたすら西を目指す、日が明けても更に西を目指し、午後に映画少年の憧れであった尾道に降り立つ。
寝不足の目には夏の日差しが痛かったが、それでも当時の僕には疲れよりも突発的に出て来た一人旅の興奮が大きかったのを覚えている。
そのあと僕は、汗をかきながら尾道を回り、そしてフェリーで四国に渡り、左回りで四国を回る。
写真を撮ったり、8mmを回したり、四万十川で水遊びをしたり、気の向くまま四国を一週間程度回っていたと思う。
いま思い出すと楽しい思い出ばかりが思い出される。
本当は孤独感もあったはずだし、その孤独から作り出される時間で山ほど考えた事があったような気がするのだが、今は余り覚えていない。
そんなことをこの昔の写真を見て思い出す。
真冬に見る真夏の思い出です。