使いみちのない風景


最近『使いみちのない風景』村上 春樹 (著), 稲越 功一(写真)という本を、
このブログとコンセプトが似ているかなっと思って手に取った。


この本の写真と文章は殆ど関連がない、
まさに使いみちのない風景写真といったところだろう。
だけど、旅先で見た風景が、作品を書くきっかけを与えたような事が書かれている。


旅先の何気ない風景。
それは貯金のようなものなのかなっと思う。


学生時代、何もしない僕に対して母は、
「なにもしない時間というのも重要だから」と言ったのをいまでも覚えている。
趣旨は、これから社会人になって仕事や家事に追われて日々過ぎて行く時間よりも、
学生時代の無駄な時間というものがいかに人間を成長させるか、というのが趣旨だったと思う。
(我が子に対して何もしない時間も重要だというのだから、なかなか言える台詞ではないなっと今でも思う。)


「モータサイクルダイアリー」というチェ・ゲバラが青春時代にバイクで色々回った時間を映画があったが、
ゲバラのその後、革命に身を投じる事になるのだから、どんな風景がそうさせたのだろう、と思っていた。
しかし、内容はそれほどドラマチックではなく、ゲバラが何気なく見て回った風景がメインに描かれている。


知るということよりも、考えるということよりも、時にはただ見るということが、
重要なんだろうな。と思う。
多分、風景が無意識に働きかけて、そのうち意識に上がってくるのだろう。
ボーっとしているようで、実はすんげー無意識に考えているのかもしれない。


何にしてもこの使いみちのない写真にもそんなパワーがこもっているかもしれませんね。

使いみちのない風景 (中公文庫)

使いみちのない風景 (中公文庫)