Coffee Time
最近、カフェーを舞台としたアニメを見た所為か、過去に読んだ本や映画や自分の思い出の中の珈琲時光が思い出される。
そのため、久しぶりに時間をかけてドリップコーヒを入れてみる。
小学生の頃、平日はパン食の家で育ったので、朝はコーヒか紅茶。
コーヒを選んだ日にはミルクと砂糖をたっぷり入れたコーヒを飲んで育った。
新聞を読みながらコーヒを飲む父親の姿や朝の光、朝の眠いけど慌ただしい風景が映像というよりはもっと抽象化された感覚として頭に残っている。
高校の頃、フィリップ・K・ディックの小説にハマっていた。
主人公達が朝起きるとインスタントのコーヒを飲むシーンが度々登場して、主人公は、
「不味い、不味い」と言いながらコーヒを飲んでいた。
安月給で偽物のコーヒを飲まざるを得ない境遇を表すのに使われていたのだと思う。
その時、活字から作られたイメージが頭の中の時間として残っている。
この小説の影響か、大人への憧れか、コーヒはブラックで飲むのがツウだと思っていて、好きでもないインスタントコーヒのブラックを飲んでいたが、そのうち肌に合わず、次第にコーヒーを飲まなくなり、コーヒーから紅茶派へと移っていった。
大学時代は殆どコーヒを飲まなかったが、友達とたまたま入ったスターバックスで飲んだカフェモカが非常に美味しくて、それ以来コーヒ嫌いが無くなったのを覚えている。
確か色んな事を話していたはずだったが、なぜだかスターバックスの街角の場面がフラッシュバックのように思い出されるだけで、何を話していたのかは全く覚えていない。
社会人始めの頃、エスプレッソが好きな子が入れてくれるエスプレッソが美味しくて、濃いコーヒも好きになったのを覚えている。
こちらも話の内容よりも、マキネッタを火にかけてエスプレッソを作る時の独特の音だけが感覚として残っている。
自主映画を撮影している頃、ファミレスのドリンクバーで入れたコーヒを飲みながら打ち合わせをしていた。
なんだか、皆の考える顔や笑顔なんかがあったという記憶だけが残っている。
そして現在、週一の英会話教室で、先生の入れてくれたコーヒを飲むのが習慣になっている。
眠気さましのコーヒ、ヒアリングの合間のコーヒ、フリートークの合間に
一口ブラックコーヒを飲む。
いまは今日あったCoffee Timeを思い出せるけど、また数年経つとその精細な会話や場面は忘れ去られ、本人も意識していない物だけが残るのだろう。
だけど、たぶん、意外に、
果たして意味があるのか分からないそんなものが、人生においてすごく大事なのだろうな、
となぜだか思う珈琲時間です。
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