僕らが旅に出る理由 〜4日目〜


8月17日
映画村に行って東京に帰ってしまう王子夫妻とも今日で別れ。
サンクス!王子王妃!
そして、複式家族とも今日でお別れ。普通の旅行に比べて、そこに住んでいる人の家にお邪魔するとなんだか自分も溶け込んで大阪が自分の町になった気がする。「お帰り、疲れたでしょ。」っていわれるのは旅行というより短期留学気分だ。
まいどおおきに!複式家族!

お世話になった複式家を出る時、王子がお礼の言葉を述べる。昨日から複式が大阪弁でお礼の言葉を言ったほうが良いと言う事で、何遍も練習させられた言葉だ。
「まいどおおきに。 しばいたろか。」
ちゃんと言ってくれました、お笑いの国、大阪ですから。^^;

王子たちと新大阪で別れ、僕はある意味本当の旅に出かける。せっかく関西まで来たのだからもう少し足をのばして、学生時代に行きそびれた道後温泉を目指す。
大学生時代の夏休み、脳みその研究をしていたがその研究にも脳みそが疲れ、研究室仲間に「尾道に失踪してくるからあとはよろしく」と言って青春18切符で、夜行に飛び乗り尾道に向かった。最初の目的地の尾道以外あてもない旅立ったが、その後船を乗り継いで四国に渡った。もちろん松山も通ったがそのときは道後温泉はスルーしてしまっていた。

道後温泉といえばもちろん夏目漱石の「坊っちゃん」の舞台で有名だ。松山に赴任した漱石がこよなく愛した温泉である。漱石の気持ちが少しでも分かるかもしれないという思いもあり、いつかは行こうと思っていた場所だ。

実家には夏目漱石全集が本棚にある。汚い本だがなぜかリビングの本棚の一番いいところに鎮座していた。
子供の時、母親に「なんでこんな汚い本がここにあるの?」と聞くと
「お父さんが好きな本だからよ。」と云う。
子供の頃はその意味は分からなかったけど今はその意味も分かる。

新大阪から岡山まで新幹線に乗り、途中下車してインターネットカフェで本日の宿を探し、特急しおかぜで瀬戸大橋を渡り松山まで3時間ちょっとの旅情を味わい、7年ぶりに松山の地に立った。そして松山駅から路面電車に乗って道後温泉に着く。
とりあえずホテルにチェックインし取りも直さず温泉に向かう。道後温泉は写真のように木造の3階立ての非常に情緒漂う建物。2階で着替えて温泉に入る、浴室は質素で、泉質も特色ない。
「わりと普通なんだな。」と思っていた。
湯から上がって畳敷きの2階席で浴衣を羽織り、女中さんが運んできてくれた熱いお茶を飲む。
日もだいぶ落ちていい夕暮れ、開け放たれた縁側は開放感があり、夜風が入ってきて火照った体に心地いい。
「ああ、これが漱石がすきな理由なんだな」と、少しだけ漱石の気持ちが分かった。

坊っちゃん (岩波文庫)

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