僕らが旅に出る理由 〜最終日〜


8月18日
夜には東京で予定があるため、今回の旅も今日が最終日。
せっかくなので朝も道後温泉に入る。今日は2階席には登らず、荷物をまとめ路面電車に乗って松山城を目指す。
城までの道中を歩いているとハイカラの格好をした二人の女の子がいる。一瞬今流行のコスプレかと思ったが、様子を見ているとどうやらボランティアの大学生のようで、城をバックに一緒に写真を撮ってもらえるらしい。気恥ずかしいが記念に一枚撮ってもらうことにした。松山城は補修中で天守閣が見えなかったがハイカラさんに会えたのが松山城の記念になった。

台風10号が九州に上陸したらしく、雨、曇りを繰り返し、目まぐるしく雲が空を過ぎていく。西に行けば少しはましになるかと思い、松山での観光をあきらめて一路岡山に向かう。

岡山駅には「倉敷の旅」のポスターが張られてあり、蔵と川の風景が心ひきつける。新幹線の指定が取れるたのが二時間後ほどあり、駅員にその時間で倉敷観光はできるかどうか聞くと見るだけなら十分できるとの事。思いつきで倉敷に向かうことにした。

15分ほど電車に揺られ倉敷駅に着く。駅と町並みはいたって普通の所。
本当にポスターに貼られたような、柳と川と蔵の風景があるのか心配になるが、美観地区と言われているところまで10分程度歩いてみる。
美観地区に入る角を曲がると写真のような本当に時代に取り残されたような一画があった。その一画は電柱もないし、交通標識もない。柳が茂りすぎではあるが明治時代の匂いがあった。
頭に、さっきのハイカラさんとはかま姿の成年が切れた鼻緒をはかまの袖を切って直す絵が浮かぶ。
そんなベタな映画を撮ってみたくなる。

「なんだ初日も蔵で、最後も蔵。それでやっぱり映画のことを思うのか。」とちょっとした偶然にニヤリとなった。


〜〜〜

夜9時過ぎ渋谷。
携帯を片手に旅の荷物を持ちながら繁華街を歩く。電話で誘導されるままに、とある飲み屋に入る。そこには懐かしい顔ぶれがあった。
「おおー!! ムンちゃん!久しぶり−!」と大学時代のあだ名で呼ばれる。
宇都宮に住むようになって都合がつかず2,3年は会っていない面子。
旅で学生時代の事を思い出したこともあったが本当に懐かしい。
周りはすでに出来上がっていて、積もる話は尽きることがない。
これから仕切りなおしで近所に住んでいるU氏の家で飲みなおすことになるらしい。

どうやら今日も帰れそうも無い。

ある意味まだ旅は続きそうだ。