ボウズ


遠くの田んぼで写真を撮ろうと緩やかにそして大胆に車を止める。
川に近いせいか、一面霧り隠れている。
僕は霧写真はまだ撮ったことがない。どんな写真になるのかワクワクしながらシャッタを切る。
カメラにメッセージが表示される。
CFカードがありません」
「やれやれ、まただ。」と呟く。
「いったい僕は何をやっているんだ、失敗に学ばない人間は上達をしない」そう心で呟く。

「オーケイ、じゃあ家のそばの田んぼはどうだい。君の注意力のなさは性格みたいなものなんだ。ただ、今日は日が合わなかっただけ。そう考えたらどうだい。」そうネズミが云う。

僕はネズミの提案に従って家に帰りCFカードを挿してまた外にでる。
外は帰宅を急ぐ車が、猛スピードで走り、夜だというのにせわしない感じがする。
たどり着いた近所の田んぼはすっかり稲刈りが終わり、霧かかってはいないが、稲穂干しの塊や、刈り取られた田んぼのあとが周りの光で照らされていて、なかなかのものだ。
「ほら、ものは考えようだよ。」とネズミは言う。
「確かに」と僕は思う。

僕はネズミとボウズの写真を撮った。



...きょうはオマージュです。