中つ国の旅 〜上海上陸〜


現地時間23時、飛行機で3時間足らずで上海浦東エアポートに着陸した。
入国審査を通過してホールに出る。日本人の名前や旅行会社の名前を掲げた沢山の人たちのアーチをくぐる。いつもなら旅行会社の名前を探すのだが、今回は素通りする。
空港は日本人と余り区別のつかない中つ国の人々でにぎわい、夜だというのに活気がある。我々はバスのインフォメーションセンタを探す。本当はリニアモータカーで上海市内まで記念に乗りたいと思っていたけどすでに終電を迎えていた。
K党と僕はタバコを吸いに外に出る。
上海の風は日本より少し寒いぐらいだろうか。横には同じようにタバコを吸いに来た女性の旅行客がいて、
「火を貸してもらえますか?」という。
僕も彼女と同じように荷物検査でライターを取り上げられていた。
「いいですよと」言い、上着からK党がライターを取り出す。
彼女が去った後、「よくK党は大丈夫だったね」と聞くと。
「なんか俺のチェックはあまかったらしい。」という。
一本のタバコを味わい二人の元に帰ってくると、友ちかとF式が看板やインフォメーションセンターで市内までのバスの乗り場を調べ終えていた。
4人みんな荷物を担いで乗り場に向かい、乗り場番号を確認する。数人がその乗り場の前にいて我々も看板を見ようと近づく。
そこに客引きがよって来て、英語で「タクシを乗らないか?」という。4人で240元、日本円では約15倍なので3600円、一人900円といったところか、日本の感覚からすれば安いのだが、かたやバスは一人8元程度。
客引きは『バスは終わった、バスは終わった、4人で乗れば安いし、早く着く。』とひたすら食いついてくる。
僕らにも不安感がただよう。バスが終わっていたらどうしようと。
しかしK党、F式は「タクシにー乗ったとしてもお前のにはのらない」と日本語でいう。
程なくバス停にバスが来て回りの人々はそのバスに乗っていく。
「良く分からないけど乗ってみようぜ、市内には着くはずだから」と友ちか。荷物を担いで乗り込んでいく、僕らも続いていく。
窓から見えるタクシーの運ちゃんは何かしゃべっていたが、諦めたようでがっかりした顔をして去っていく。
こういう片言の英語をしゃべる客引きを目にすると「海外に来たのだな」と実感する。


バスの料金は女性の車掌が徴収していく。だけど英語は通じない。
八年前の旅行のときに痛感したが市民レベルではまったく使えないのが中つ国である。
我々はひたすらNINTENDO DSの中国語ソフトとガイドブックを駆使してなんとか話す。
時間はかかるが通じたようで、お金と引き換えにペラペラの切符を渡される。友ちかはそれをおでこに貼り付けキョンシのような顔をしている。みんなテンションの具合はいいようだ。
一時間ぐらいバスに揺られながら上海の夜景を楽しむ。
内心はどこにつれてかれるのだろうという思いを抱き、ガイドブックの地図と睨めっこの1時間が過ぎた。
数箇所の停留所を過ぎておそらく次が僕らの降りる停留所。
車は急ブレーキ気味に停車し、車掌が僕らを手招きしている。
僕らは停留所に下ろされ、しばし、右も左も分からない状況になる。
しばし呆然「さーてどうするか。」という感じ。
ガイドブックを見ていた友ちかが「分かった今ここだ、だからこの道をこういえばけるよ」と希望の声。
我々は友ちかの後に続いて歩き出した。

客引きもおらず、自力勝負と思うと少し余裕が出てくる。間違ったとしても歩けばいずれつくのだ。
友ちかを除く3人がカメラを取り出し、海外の初日特有の『見るものすべて珍しい状態』でパシャパシャ写真を撮っていく。
変な建物、変なバイク、巨大なトランス、フェラーリのエンブレムの付いたスクータ、リアカーつき自転車。
目に映るすべての珍しいものを収め、上海ヌーンの薄らぼやけた町中を背景に、お互いを写真に収めていく。
次第に僕が新宿アルタ前と呼んでいる人民広場の看板も出だし、僕らのホテルも近づいていく。

僕は徐々に栄えてくる街並を見ると中つの国に戻ってきた実感がわいてくる。
町はだいぶ変わってしまって昔の面影はない。
だけど頬に当たり、上着の上からも身を凍らせる上海の空気は、心の中には暖かさと懐かしさを与えてくれた。

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