中つ国の旅 〜プロローグ〜


12月14日、暑さもひとしきり終わり、ヒグラシの鳴く季節。
四十九日を過ぎてもいっこうに片付けられないおじいさんの部屋は、
ひょっこり扉を開けると椅子に座ったお祖父さんが振り返って、
「どうした、ボウズ」と言って、微笑んでくれる感じがする。
部屋に入り、かつておじいさんが座っていた椅子にすわる。
ふと机の中をあけてみると写真と変な動物が頭についた印鑑と色あせたノートが出てきた。
ノートには『中つ国の旅』と書かれいる。
昔、おじいさんが教えてくれた中つ国への旅行の話がつづられているようだ。
「その当時はまだ冬が寒く、中つ国は今とはだいぶ違っていて、そしてまだ旅が旅として成立する、昔の小説のような旅情がまだかろうじてあった時代だった。」とおじいさんが言っていたのを思い出した。

僕はそのノートを手に取り、お祖父さんの椅子に座り、「中つ国の旅」と書かれたそのノートを読んでみることにした。

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