Prunus Mammuthus


一本の見事なサクラの木。老人はその前にあるベンチに座っていた。
杖を傍らに置き、満足そうにサクラの木を見つめている。
老人はねずみ色の帽子を被り、土色のコートを羽織っている。
老人の顔は皺くちゃでその皺から彼が歩んできた人生の長さを物語っていた。


「先生、ここにいましたか。」
老人は振り返る。
その目線の先に白衣を着た中年男性がいた。
中年の少し後ろには数人の若い白衣の若者達が取り巻いている。


「先生、お体に触りますから」と中年男性は手を引き老人に車椅子のようなものに座らせようとするが老人はそれを断り、杖を突いて歩を進める。
その後を中年男性が続く。
空のままの車椅子のようなものは、「ブゥン」と唸ると浮き上がり、彼らの後に続き動き出す。


「だれだよ、あの老人は」と後ろの若者の一人が隣に耳打ちする。
「知らないのか、お前。あの老人が、初めてキメラの合成に成功した高村博士だよ。」と耳打ちする。
「じゃあーあのサクラが。」
「そうだよ。Prunus Mammuthusさ。」


若者二人は歩きながら、遠くになりつつあるサクラの木に目をやっていた。



...なんてね。笑

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