Piano Of Passion


以前星を見につれてってくれたF氏がピアノの発表会に出るとの事で演奏を聴きに行く。
会場のロビーに演奏前のF氏がおり、普段見慣れない整ったスーツを着ながらピョンピョンと跳ねたり伸びをしている。
普段仕事場ではどちらかと言えば物静かなF氏。
鉛筆で何か注意書きが書き込まれた楽譜を開きながら立ちながら指を動かし、
「ここさえ乗り切れば何とかなるんですが」とつぶやく。
今日はいつになく緊張した面持ちだ。
数人の演奏が終わりいよいよF氏の番。
演目はショパンのバラード第一番。
一礼し、席につき、一拍おいて演奏が始まる。
私はクラッシックには疎いが、曲は穏やかな所と激しい所といろいろ起伏に富んでいる。
なんだか情熱的な恋をして、ゆったりとした生活を過ごし、最後に自分の人生最後の鼓動を歌うかのようだ。
F氏は曲に感情を乗せて顔を歪ましたり微笑んだり変化させ、激しいパートでは椅子から飛び上がらんかのように舞い、鍵盤を激しく打ち付ける。
ミスはあったものの情熱的で心の伝わる演奏であった。
演奏後F氏に会い。
「Fさんの情熱の出しどころが分かりましたよ。」というと、
「そうですか。」といつもの感じのF氏のテンション。
不満はあったみたいだがとりあえず出し尽くしたみたいだ。


F氏にとってピアノが自己表現の表現手段であり、F氏にとっていかに重要なものなのが強く伝わる発表会だった。
今度また惚れそうな情熱的なピアノを聞かせて下さい♪