リンカーンからオバマ イン ワシントンDC


夕飯を済ませてワシントンDCのホテルに着いた時には、時計は21時を過ぎていた。
「明日ワシントンDC観光だね。」と言ってF式夫妻と部屋で分かれる。
部屋でくつろごうとしていると、F式が部屋に来て、
リンカーン記念館が24時まで開いているみたいだから行ってみない?」と言う。
我々とアッシュの3人と1匹はリンカーン記念館まで夜の観光に出かける事にする。


ホテルからワシントン記念塔まで夜のワシントンDCの街を歩く。
ワシントンDCの街は、ワシントン記念塔よりも高い建物を立ててはいけないという法律があり、ワシントンDCの街には高い建物はなく、整然として奇麗で雄大な町並み。規模はだいぶ違うが霞ヶ関のような町並みである。
記念塔を過ぎ、フォレスト・ガンプがヒロインと抱き合った泉を過ぎて、ライトアップされたローマ風の建物が見えてくる。
僕は近づくにつれて予想よりも大きな建物に少し驚く。
そして階段を上がって行くと、写真の、椅子に座った巨大なリンカーン像が見えてくる。
僕は長い間リンカーンを見上げる。
F式はしばらくして「Minoresu、感動した?」と聞く。
僕は静かに頷き「アメリカは現代のローマ帝国だね。」とつぶやく。
しばらく感動に浸っていると、F式がガイドブックを片手に
「建物の後ろに回るとJ・F・ケネディーのお墓にある炎が見えるらしいよ。」
と言い、一緒に建物の裏手に回る。
建物の後ろに回り、僕らはケネディーのお墓の炎を探す。
ワシントンDCの街に広がる光を指差しながら、
「あれじゃない?あれってことにしようか!」などと話していると、
警備員が二つの意味で心配したようで、僕らの元にやって来て、何か英語で聞いてくる。
F式が英語で対応し、ケネディの炎を聞くと警備員が指差しながら教えてくれる。
それに納得した僕らは、警備員と共に表に向かう。
F式と警備員は歩きながら何か話しており、後で僕は、
「何話していたの?」とF式に話の内容を聞く。
「今日のアメリカ大統領選挙オバマとマケインのどちらが勝つかって。あの人は多分オバマが勝つだろうって言ってたよ。」とF式がいう。
MAYUMIさんとアッシュッと合流して再び来た道を戻る。
戻る道はえらく長く感じる。
ホテルに着きF式夫妻におやすみを言い、部屋に戻る。
時間は既に12時を回っており、僕はテレビのスイッチを入れる。
するとちょうどオバマが演説を始める所だった。
どうやら警備員の予想どおり、オバマが大統領になったようだ。


僕はしばしオバマの演説を聴く。
演説の内容は半分も分からないが、その興奮は伝わってくる。
そして「Yes,We can!」が始まる。


リンカーンケネディー、そしてニーヨークのマンハッタンとワシントンDCを見て来て、そしてバラック・オバマ
一日でアメリカの歴史を一瞬に見通した感じ。
今のアメリカはサブプライムに発する経済危機で一時の輝きを失いつつある。
しかしさっき感じた『アメリカは現代のローマ帝国』という思い。
そして、黒人初のアメリカ大統領が誕生した事実。
ローマ帝国は400年以上(長く解釈すれば1500年近く)存続して来たが、そのためにはいろいろなドラスティックな変革を経験して来た。
そしてローマ帝国のような国でも終わりがあるという事実。
僕はアメリカに来なければ後者を今のアメリカに投影したかもしれない。
だけど、僕はこの旅行でアメリカはまだまだ変われるし発展するんだなっと、漠然ではあるが、確固たる芯のようなものを感じる。
その芯はなんだろうか?


リンカーン像の新しさと大きさと、靴を投げ出したスタイル。
記念館が24時まで解放している。寛大さ。
それを作り出す合理的な考え。
世界中の人々が集まったアメリカ。
実力があれば黒人を大統領にできる国民の強さと制度。


今までアメリカの端々を見て、その度に感じる事ができるアメリカの底力の強さ。
僕は、まだまだ滅亡にはほど遠いだろうとワシントンDCのホテルのベットの中で一人思う。