フラワーシャワー


今日はK党の結婚式。
式場まで向かう電車に揺られながら、K党と行った旅行を思い出していた。


社会人一年目の夏休みに、二人で盛岡でねぷたを見た後に北海道をフラフラと旅をしたことがあった。
その道中、たまたま宿の取れた大雪山ユースホステルに泊まり、次の日の朝には、宿で一緒になった方と大雪山の登山をする事になっていた。
靴こそ運動靴だったが、レインコートや登山用バッグもない普段着。
それに加え、山の途中には山小屋なんかがあって飲み物やお弁当なんかが買えると思っていたため、飲み物は500mlのペットボトル一本、というピクニック気分の登山だった。
炎天下の中、山を登ること、数時間。空になったペットボトルとともに山頂に到着した。
天気は快晴で眺めの良い山頂の景色。
そこには雄大さがあり、登山者の優しさがあった。
苦労が報われるだけの奇麗な山頂だったが、売店などあるはずもない山頂。
だけど、道中一緒だった方が「3つおにぎりがあるから一人ひとりずつね。」とおなかが減っているだろうに分けてくれる。
また山頂で知り合った方がそんな僕らの様子をみて缶詰の桃を一切れだけ食べて残りを僕らにくれたりした。
今思えば無謀な僕らは周りの優しさに助けられながら無事登山をする事ができたのだ。


別の旅行で海に行った時には、K党とF式と共に海で溺れた。
様々な偶然や周りの助けが重ならなければ僕らは生きていなかったと思う。
特に死の間際まで行っていたK党。
やっとの思いで海岸までたどり着いた時、嗚咽しているK党の姿を今でも覚えている。


そんなことを思いだしながら僕は式場に到着する。
式場の門をくぐると、早速K党がカメラを下げながら歩いてくる。
「よ!おめでとう!」と僕が言うと。
K党は笑顔で首を振り、「弟です。」という。
そこで、話では聞いていた一卵性の双子の弟さんのことを思い出した。
瓜二つとはこういうことを言うのだ。


式が始まり、本物のK党が登場する。
式中に二人をよく見比べてみると顔つきが微妙に違う事が分かる。
少しK党の方が穏やかな感じがする。
遺伝子が同じ二人でも経験して来た事は違う。
僕の知っているK党は一緒に山に登り、一緒に溺れかけたK党。
命の尊さと自然の素晴らしさを共に知っているK党なのだなと思う。


溺れかけた翌日、K党は言う。
「海を嫌いになりたくないから、今日も海に行かないかい?」
僕らの脳裏にK党の嗚咽する姿が浮かぶ。
だけど僕らは、
「そうしようか!」と言い、その心意気に乗っかる。


式は和やかに華やかに進み。
周りの笑顔とk党の笑顔が人生の楽しさを物語っている感じがする。
素晴らしき哉、人生!


ガーデンにて、奥さんに挨拶して僕は祝福を込めて花びらを天に放る。
「おめでとうK党! そして、よろしくね奥さん!」