まちぼうけ


昨日の話。
車でラジオを聞きながら帰っていると、村上春樹の新刊『1Q84』が本日発売と語っている。
「あれ、29日じゃなかったかな。」と思いつつも本屋に行く。
どこを探しても見つからず、諦めて別の本を買って車に乗る。
すると、またラジオで本日発売っと語っている。
「今度は聞き間違いじゃない。やっぱり今日なんだ。」と思い。
別の本屋に車を走らせるが、やはりない。
店員さんをつかまえて聞いてみるとやはり「29日ですね。」との事。
訳が分からず家に帰ってネット検索してみると、東京の一部の本屋で先行発売との事。
久しぶりに東京が羨ましくなってしまった。


おそらく本のタイトルは1984年の事を示していると思う。
僕にとって1984年というのは特別な年である。
当時、小学生であった僕は、この年が一番良い年だとなぜが思った年である。
その思いは、啓示のように訪れ、そして、記憶として頭に刻印のように刻み込まれている。
それくらいはっきりとした記憶だった。
メフィストに、「時をとまれ、今年は一番だ」と思わず言ってしまいたくなるぐらいだ。
なぜそう思ったのか。その瞬間は一瞬だったはずだが、小学生ながら時代を感じたんだと思う。
確か夏休みに行われたロサンジェルスオリンピックで、宇宙服を着た人間がオリンピック会場まで空を飛んで来たときに「人が飛べる時代が来たんだ」と子供ながらに思った。(未だに人が空を飛ぶのは当たり前にはなっていないけど...)
そして、日本体操の感動的な金メダル。
ファミコン全盛で、毎日がファミコンをやるために生きていた様なあの小学生の呑気さ。
時代の上り調子を子供ながらに肌で感じられる。
全てが一見ハッピーに見える時代。
だから、小学生の僕はそんな事を思ったのだろう。


うん、話は確かに通っている。
だけど、本当はもう少しパーソナルな事情とトリガーがあったはずなのだが。
残念ながら、その事情とトリガーについては全く持って記憶にはない。
ただ、啓示のように思ったという事実だけが刻印されているだけだ。


そんなわけで、本を読めば、そんな忘れ去られた記憶をノックしてくれるかも知れない。なんて思いながら明日は本を買い、読もうと思う。