Frozen Pond in the shade


久しぶりに栃木県立美術館に行く。
大学の友人と一緒に訪れた以来なので、もう10年近くになる。
宇都宮美術館は度々訪れていることを考えると、だいぶ市営美術館をヒイキにしているのだなと思う。
県営美術館は企画自体はたまに面白いのをやっているのだけれど、美術館自体にそれほどの魅力を感じていない。
そのため、企画自体が「ハズレ」だった場合、市営美術館なら
「美術館が見れたから、まあいいか。」となるのだけれども、県営にはそれが無いのでなかなか来なくなってしまう。


さて、栃木県立美術館では、ドイツ人の女性写真家であるズィビレ・ベルゲマンの写真展が行われているとの事。
「栃木で(プロの)写真展が開かれるとは珍しい!」と思い、出かける事にした。
ズィビレ・ベルゲマン氏は残念ながら昨年11月、69歳で亡くなってしまったようで、図らずも追悼企画のようになってしまっていた。
私は写真家の名前も知らず、ただ彼女の撮った写真を一枚一枚眺め、彼女が閉じ込めた世界を覗いていく。
それらは東ドイツのイメージ的な写真や、社会派な写真、モードファッションの写真、民族ファッション写真、ポラロイド写真など、バラエティーに富んでいて目を楽しませる。だけどもなぜだか心は踊らない。けっして悲惨な写真やグロ写真はないのだが、もしかしたらそれが故なのか、なぜかパサついた印象を与えている。
潤いのない、勢いのない写真ばかりに見えてしまう。
それが、東ドイツの所為なのか、女性目線には見えない隠れた女性目線の所為なのか、それとも作者の意図なのか、結局分からなかった。


僕は写真展を見終わって美術館の外を窓から眺めてみる。
すると美術館の日陰にある池は見事なまでに凍りつき、すべての物を停止させていた。
「そう、今日見た写真展は日陰の池の氷のような感じ。」
そう思いながら、シャッタを押した。
そんな冬の静止した日です。