不忍池


帰宅途中、上野で下車する。
「電車の連絡がよければそのまま帰路へ、悪かったら降りよう。」そう決めていた。

帰宅する人並みを逆流して東京都美術館を目指す。上野公園内はまだ日が残っているので大勢の人たちが思い思いに休日を過ごしている。動物園帰りの家族や、楽器を抱えた芸大生、本を読む人、恋人達、猫に餌を与えているおじさん、それを見物するおばちゃん、大道芸人、絵描き、カメラを撮る女性...他のところより幅広く、様々な人が集まっていた。

美術館に入り研展を観賞する。
数え切れないほど写真があり、これほどの人が写真を撮って人に見せている事実。それがなんだか心に届いた感じがした。

不忍池を見て帰ろう。」そう思ってカメラを肩に掛けて遠回り。弁天橋を通り、蓮の葉が池一面に生えている池と生えていない池の違いを考えながら歩く。そして上野駅で電車に乗る。
座席に着き、小説を開き、ふと思う。
「運良く電車の連絡が悪くてよかったな。」