流れ星に願いを込めて 後編


魚眼写真2枚、この望遠写真1枚、試し撮りしたところで空への窓は閉じられてしまった。ものの30分ぐらいの時間だった。

「待ちですかね。」と移動式三脚を使う準備時間がなかったF氏が云う。
「ですかね。」と僕。
二人タバコを吸いながら空を眺めながら雑談をして過ごす。
なかなか晴れない空を前に、車内でかかるラジオをバックに雑談をする。
「暗闇で一人で待っているのって、まったく怖くないんですよ。」とF氏。
「その感覚人間並みじゃないですね。もう暗闇制覇っすか。」と僕。
「いやいや、でも獣の類が怖いんですよ。今年熊の当たり年だし。」とF氏。
そんな話しをしながら3時間ぐらい車内で待つがいっこうに晴れない。
場所を北へ1時間ぐらい移動させ、さらに30分ほど待つ。しかし、星は姿を見せてくれなかった。

車を出てタバコを吸いながら、空を凝視する二人。
月は新月で雲によって星の光は遮断され、町の灯りもない、辺りは完全な闇だ。
10メートルぐらい向こうの草むら、
『ガザ、ガサ』と、音。
「なんか音しましたよね。」と僕。
「しました?」とF氏
『ガザ』と草むら。
二人、目を合わせ草むらに目を向ける。
「懐中電灯あててもいいですか」と僕はF氏に了承をもらい、草むらに光を当てる。
光は闇を切り裂き、草むらに光が当たる。
しかし、何もいない。

心地よかった空気は一瞬にして変わる。
暗闇に感じていた親近感はすっかり恐怖感に変わっていた。
空は一向に晴れることなく、どちらかといえば悪くなっている。
背筋に感じるものがある。
「帰りますか」と言うF氏、同じ気分。

午前2時、帰宅への道をひた走る。
カーステレオから流れる音と光が、次第に心地よい普通の夜の空気に変化させる。
二人は獣の類は忘れ、雑談に興じた。


闇と星と獣。
町を離れた人間にとって、自然のパワーはどれも強い。

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